学び方

電子書籍の普及は「紙の本」を手に入らない特別な存在にする

印刷書籍というのは、将来的には限定品的な「スペシャル」な商品として位置づけられることになるだろう。つまり、電子書籍で読んだファンが、グッズとして印刷書籍を買う時代になる。ー第1章 原稿料と印税-「作家の収支」よりー

メフィスト賞を受賞し、アニメ化もされた「すべてはFになる」の著者、森博嗣さんの新書「作家の収支」。本書より、印刷書籍と電子書籍の今後に関するひとこと。

物理的なコストのかかる紙の本を、電子書籍が「数」の面で大きく上回っていくことは明白であろう。そうして年月をへて、「電子書籍」がより一般的なものとなったとき、区分けとしての「電子」という言葉は意識されなくなり、ただの「書籍」となる。

それこそ、いまから「本」という概念を知るような小さな子どもたちにとっては、「紙」か「電子」かなんてのは、読む方法の違いがあるだけで、認識としての「本」に違いはなくなるのかもしれない。

そうなったとき今度は、「紙」という物理的な質量を持つ印刷書籍が、「書籍」の中の特別な存在として認識されるようになる。上段のひとことで触れられていたような、一部のファンだけが購入する流れもきっと起こるであろう。これは読者側が「電子書籍」を手に取りやすくなるというだけの話ではない。

著者側の販売モデルとしても、そもそも紙の本は一般には流通させず、在庫コストのかからない電子書籍だけをネット上のストアに並べる人が出てくる。そして紙の本は特別な特典として、ファンクラブや最近で言うところのサロンなどで、本当に欲しいというファンからの「注文」を受けて、その数だけ印刷するという形を取る人が出てくるだろう。

「紙」でしか出版しない「本」というのも一部残っていくだろうが、全体としては、「電子」はより「一般」的な本というものへと近づいていき、「紙」は「特別」なものへと変わっていくかと思われる。

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