みなさんは小学生のころ、どんな本を読まれてましたか?
低学年の1年生、2年生なんかだと、まだ絵本や、文字の大きな簡単な本を読んでいる子が多いかと思いますが、高学年の5年生、6年生にもなってくると、ちょっとした本でも自分で読めるようになってきます。
ぼくの場合は、低学年はゲームばかりしていたのですが、高学年になって読んだシャーロックホームズで読書に目覚め、その後、学校の先生からのすすめで読んだハリーポッターで完全にハマった感じでした。
しかし、子どもの興味もひとそれぞれ。その子の興味関心でハマる本も変わってくるでしょう。
そう考えて、ふと、読書家の方たちだったら、どんな本を小学生高学年の子たちにおすすめするのかなと気になりました。
そこで、「小学生高学年におすすめな本」と題して、読書好き8人の方に、お話をうかがってみました。
「その本のどんなところが小学生高学年の子にいいと思ったのか」「自分自身はどんな風にその本を読んだのか」など、体験談もまじえていろいろと語っていただいています。
推薦してくれた方の境遇もさまざまなので、小説から実用書まで、いろんな本が集まりました。
今回の記事が、子どもたちの本を探されているお母さんやお父さんの参考に少しでもなれば嬉しいです。
小学校高学年になったら読んで欲しいおすすめの本7冊
少年探偵団(著:江戸川乱歩)
推薦人:ひでぽん
私が小学校高学年のころ、夢中になって読んだ作品が、江戸川乱歩の『少年探偵団』シリーズです。
少年探偵団は名探偵明智小五郎の助手である小林少年を団長に結成されたもので、怪人二十面と戦います。
探偵モノですからいわゆる推理小説と言ってもよいのですが、少年探偵団の活躍という観点からすると冒険活劇と言ったほうが適切かもしれません。
舞台は戦前から戦後までと、現在の感覚からは全くかけ離れているものの、少年探偵団のメンバーが自分と同年代であることで、憧れにも似た感動を覚えるのです。
自分には到底できない冒険をする少年たち。それは、どの時代の少年にも関係なく、勇気と憧れをもたらしたくれるのです。
それゆえに、この『少年探偵団』シリーズは発表から半世紀たった今でも、変わらぬ人気を保っているのだと思います。
また、戦前から戦後にかけての、貧しいながらも逞しく生きていた少年たち。そして忘れがちになってしまった戦争という背景が、作品のなかにふんだんに描かれることで、忘れてはいけない日本の戦争体験を後世まで伝えてくれるのです。
平和な時代の子どもたちに、是非とも読んでほしいと思います。
蜘蛛の糸・杜子春(著:芥川龍之介)
※こちらの本は2人の方におすすめいただきました。
推薦人:トリケラトプス
読みやすいですが、何度も読んで意味を掘り下げて考えたくなる良書だと思います。
私は中学生の国語の教科書でトロッコを読みましたが、場面をイメージしやすくラストも余韻を残す形だったので好きになりました。
それがきっかけで新潮社の蜘蛛の糸・杜子春を読みましたが、他の話も優しい語り口で好きになりました。
ただ、一回読んだだけでは、「なぜそういう展開になったのか?」、「どういう意味があったのか?」など、謎が残る点があるので繰り返し読みたくなります。
同じ本を繰り返し読み、意味を考えるということは、大人になるための読書の方法として、オススメです。
親子で読んで、話し合ったり、お互いの解釈を言い合ったりするのもいいかもしれません。
同じ新潮社の羅生門・鼻もありますが、ちょっと話が暗くなりすぎる印象があったので、入門としてはこちらがオススメです。
もし、いきなり読むのが難しければ、蜘蛛の糸などは絵本やアニメになっているのでそちらを見てからでもいいと思います。
推薦人:ねむ亭三
おそらく、他の人と同じくらいではあると思いますが、私も小学生のころは童話なんていうものが大好きでね、その多くは児童館などで読んだものなんですが、中でも芥川の童話が好きで、よく借りてましたね。
芥川龍之介って言えば、今ではもう学校の国語の教科書にも出てこなくなりました。なんでも表現が古すぎるとかで。でも、これがまたいい。もちろん、異論も反対意見もいくらでもあるでしょうが。
その中でも特におすすめしたいのが、『杜子春』なんですね。この本には人間の悲しい性について説かれてる。これはなかなか難しい問題ではありますが、ぜひとも読んでご自分なりに解釈していただきたいと思うんですよね。
本書の中に登場する杜子春という若者の身に起きた出来事ってものは、実は形こそ違いますが、私たちが実際に経験してることばかりなんです。
これはやっぱり生きていくには必要な経験なんだと思うんですね。正直いうと、いまになって分かったような気がする部分もあります。
そんなわけですから、小学校の高学年ともなれば、芥川の小説はやっぱり読んでいただきたいものですね。
風が強く吹いている(著:三浦しをん)
推薦人:うたのーと
著者は、日本アカデミー賞を受賞した映画『舟を編む』などの原作者、三浦しをんさん。
他の作品やエッセイもおもしろく、小学生でも少し背伸びすれば楽しく読めるものが多いですが、特におすすめなのが『風が強く吹いている』です。
この作品は箱根駅伝をめぐる青春小説。格安の学生アパートの住人たちが、箱根駅伝出場を目指して奮闘するというストーリーです。
ユニークなのは、メンバーがほぼ全員陸上初心者だということ。そして駅伝まで残された時間は1年未満。ほとんど不可能だと思われる状況で、どうやって夢を叶えようとするのか……。
若者が希望を失いがちな現代だからこそ、忘れてはいけない無鉄砲な情熱で溢れています。
ストーリーもさることながら、作品の大きな魅力は生き生きとした登場人物たち。
昔の怪我で陸上を諦めた才能ある青年、床が抜けそうなほどの漫画に囲まれて暮らすオタク、卒業せずに留年を続けているヘビースモーカー。
駅伝を目指さないにしてもめちゃくちゃな人たちばかりなのに、なぜかとても魅力的です。
それはきっと、箱根駅伝というひとつの目標に向かって、だんだんとらみんなが本気になって努力を始めるから。仲間の大切さや、本気になることのかっこよさを教えてくれます。
ページ数は多いですが、会話が多く展開が早いので、一気に読めてしまいます。そして三浦しをんさんの日本語の美しいこと。ぜひ、将来有望な少年少女に読んでほしい傑作です!
かぎりなくやさしい花々(著:星野富弘)
推薦人:キムチ
この本を手にしたのがまさに小学生の高学年でした。夏休みの読書感想文に、自分で図書館で選んだ本です。
妙に表紙のイラストが優しくて、心が惹かれて手にとってたのを今でも覚えてます。
小学生の高学年でもスラスラ読めるし、字もそんなに小さくないので抵抗なく読めるかと思います。
また筆者が体育教師ということもあり、小学生でも読めるように難しい言葉を選んでないところが素敵だなと思います。
筆者の半生を描いたノンフィクションであるからこそ、小さな子供たちの胸に刻まれる何かがあるのかなと思える作品になってます。
衝撃的な半生なため、びっくりしてしまい自分だったらどうしたのだろうかとか、こんなにたくましく生きていけるのだろうかとか自分自身に問いかけざるおえない作品でした。
数多くの本を現在まで読んできた中で、1番心に残ったこの本をお勧めします。
どんな困難にぶつかっても前に進むエネルギーをこの本から感じてくれたら嬉しいなと思います。
ハッピーバースデー(著:青木和雄)
推薦人:かぼちゃ
わたしはこの「ハッピーバースデー」をぜひ小学校高学年の子どもたちに読んでもらいたいと思います。
この本は1人の少女が母親からの愛情を受けずに育ち、母親から「あんたなんかうまなきゃよかった」という、衝撃の言葉から始まる物語です。
そして、それでも母親に愛されたいという思いは消えずにいたのです。ですが、その言葉から、自分自身の「言葉」を失い、しゃべることができずにいました。そして学校にもなかなか明るい気持ちで行くことができずにいました。
ですが、祖父母からの無償の愛情を受け、徐々に明るさを取り戻していき、声も出るようになっていくのです。
この物語を初めて読んだのがちょうど5年生くらいの時でしたので、すごく心に響きましたし、わたしが実際にこの子と同じような思いをしたらどう思うだろうとすごく考えました。
命の大切さや人の温かみを知った物語になっているので、ぜひともそういったことが分かってくる時期に読んでほしいなと思います。
ハリー・ポッターと賢者の石(著:J.K.ローリング)
推薦人:たまごママ
小学生高学年になると、ミステリアスな小説に一度はまれば、引き込まれるように読書が進んで行くはずです。
特にハリー・ポッターシリーズは何冊も出版されているので、1冊読み終えると続きが気になります。
ホグワーツ魔法魔術学校グリフィンドール寮に所属する生徒達の物語で、魔法界の子供達の様子も興味深いです。
ハリーは孤児として親戚宅で11歳まで暮らし、自分の両親が魔法使いだとわかったと同時にホグワーツへ入学することになり、そこからはめまぐるしく物語が進んでいきます。
闇の魔法使いヴォルデモートを倒す宿命がだんだんと理解できていく様子など、ハラハラする場面も多々あるので、次が読みたいと感じる作品になっています。
ホグワーツでの同級生のロン・ウィーズリーやハーマイオニー・グレンジャーらと共に闇の魔法使いと戦いながら成長していく様子がとても楽しく感じる作品です。
子供から青年へと成長していく様子、また冒険を通して子供達なりに考え知恵を出し合っていく姿は感動しながら読み応えある作品になっています。
プロジェクトX挑戦者たち
推薦人:あんたっち
内容は、社会人が真面目に働く姿を追っていくものなので、難しそうに感じるかもしれませんが、この本の装丁や文体は、小学校高学年でも読みやすいようにと工夫を凝らしています。
「働く」とは「その物事に真摯に向き合うこと」、その気付きの瞬間や、成功に導く過程の変化や着目点など、世の中は日々の繊細な思考とそれに追随する弛みない努力で日進月歩していることを感じさせてくれます。
自分がこの先何を求めて進んで行くのか、その目標がまだ定まらない年齢だからこそ、職種、業態、年齢に関係なく、先駆者の話を聞いて、その道のりや苦労の時代を理解しながら、働くことを考えてみるというきっかけになる一冊ではないでしょうか。
時代と共に、人気の職業は変化していきます。それは子ども達がどこを見ているかに過ぎません。
この本を読んでいくことによって、スポットライトがあたっている職業以外のたくさんの職業を知り、働く人の熱意を感じ、その熱意の根底にある働く姿勢というものの共通点を見い出せた時、将来の選択をする上での戸惑いや不安は無くなるのではないかと思います。
成長期にこの内容を吸収することで、働くことにやりがいを求め、感動に導くものを探求し、人生をかけて誇れるものを見つけられるような気がします。